ビジネスを始める前に100冊読む⑫

ミーと文庫本雑記・書評

先月は、給与計算2級の勉強や事務指定講習の手続きといった実務に近いことの初歩的な勉強をやっていました。

この「100冊読む」も、労働基準監督署のモノや労働組合のモノ他に事例集を読んだりしていました。

その反動なのか、今回はちょっと軽い感じのモノをさらっと読もうかなという気持ちに。

 

そうして、アマゾンで、星の数がそこそこついているモノを選んで、ポチりました。

今回は、文庫本サイズのもの、三冊になります。

上から、良くない、良い、とても良いの順になります。

 

就業規則に書いてあります!|桑野一弘|メディアワークス文庫

昨今問題になっているアニメ業界のクリエーターの働き方という暗い部分を軸に書かれた小説です。

著者には悪いですが、書かれている内容そのものでは、法的な勉強の材料にはなりません。

むしろ、労働法関係を少しでも勉強した人には、もやっとする場面の多い本です。

それは書いている小説としての内容もそうなのですが、アニメ業界のことも、主人公のキャラ設定も、アニメの鬼と称されるライバル?も、そもそもこの主人公の叔父であるアニメ制作会社の社長の無関心・無作為も、もやっとします。

ですので、読んでいて、?マークがついたところは、ググるなりして確認し、知識を強化するという、反面教師的な使い方のできる本です。

 

たとえば、小説として描写のリアリティさの「もやっと」でいうと、24歳になったばかりの主人公の女性が「まったくの門外漢です。うんぬんかんぬん」と、21歳の女性に対して言う場面がありますが、今の若い女性がこの三文字熟語を会話で使うのかなぁ?

 

著者はこの中間管理職的なアニメの鬼を「もう一度この会社を元請け会社にしたいという夢を持つ青年」と一部好意的に描写していますが、まったく共感できませんでした。なぜなら、彼はこの会社の労働犯罪の大元だからです。

 

ちなみに、別の記事で、近年アニメ業界で働く人からとったアンケートによると、73%が業務委託(つまり個人事業主扱い)、19%が契約社員、正社員が7%とありました。

 

この小説の会社で働く人はどうやら契約社員みたいなのですが、連日の泊まり込み作業が当たり前のようですので、ほんとは残業代をものすごく払わなければならないはずです。仮に専門業務型裁量労働制をとっていたとしても、深夜と休日の手当は払わなければならないです。でも、個人の裁量で働いているようには描かれていませんので、裁量労働制としては無効でしょう。そもそもプロデューサーでもディレクターでもない一般のアニメーターは専門業務型裁量労働制の枠内に入れないようですしね。しかしながら、働いている人たちがたくさんの残業代をもらっていて高収入でもなさそうですから、サービス残業なのかなぁと思ったりします。

まぁ、違法・無効な状態であっても、それが違法・無効であるとわからずに会社の言うままになっていて、気付いた誰かが労基署に言ったり裁判に打って出なければ、その状態は是正されませんから、結局は勇気ある誰かが改革の声を上げるまで、そのままの状態が続くのかもしれません。

と架空の話にマジレスする私。

 

で、追記しますと、ネットニュース(プレジデント社の)で、立場が逆転し中国が日本のアニメ業界の人材を下請けに使っているという記事がありました。日本より単価が相当高いらしいですね。

アニメは日本の文化・輸出産業であると国を挙げて持ち上げていましたが、産業構造の抜本的改革や、永続的な人材育成をしてこなかったのは、残念なことです。

ひよっこ社労士のヒナコ|水生大海|文春文庫

「ひよっこ」と題名になっていますが、すでに勤務社労士の先生として企業対応を一人でこなしているヒナコさんの物語ですが、ストーリーのある事例集ともいえる本です。

法律の勉強にもなりますし、社労士事務所の雰囲気や仕事ぶりも垣間見えますので、そのあたりも勉強になります。

こちらの本は、1話完結で、6話の構成となっています。

そのうちの1話は、ヒナコさんがまだ社労士になっていない派遣社員時代の悲哀を描いたものがあります。

新しく派遣されたヒナコさんの教育係の正社員の人は初めは良くしてくれていたのですが、その人は他部署の副部長と良からぬ関係になっていて、その副部長の扶養家族の収入証明書を、悔しさからなのか何なのかわかりませんが、ヒナコさんが年末調整を担当していたその副部長のファイルから抜き出して捨ててしまいます。なくなったと大変だ!と皆で大騒ぎしますが見つかりません。

そして、もう遅いので明日また探そうということになります。

でも、皆が帰った後、その教育係の不審な行動を察知していたその課の課長が、その紛失書類を見つけて、こともあろうか、ヒナコさんのファイルに戻してしまうのです。

それで、ヒナコさんの100%せいになってしまいます。

いわゆる胸クソの悪い話ですね。

社内の平和のために隠ぺいを図る課長によって、派遣のミスにされて幕引きになるというお話です。

そして、最後、どういう感情がそう言わせるのでしょうか、その教育係は、ヒナコさんに問い詰められて書類を抜き出したことを白状しますが、そのときのセリフは「そもそも私たちと違うんだから(正社員と派遣は違うという意味)」と言ってしまいます。

そして、ヒナコさんは次の契約更新で「雇止め」になってしまいます。

その後、ヒナコさんは、猛勉強の末、社労士になるのですが、社労士を志す人には、働いていたときに理不尽な目にあって、その状況を少しでも、たとえ他社でも改善したくてなる人が少なからずいます。

会社を潰すな!|小島俊一|PHP文庫

私の町に一軒、郊外型の本屋さんがあります。明屋(はるや)書店といいます。

この本の一番後ろの解説のところでわかったことですが、著者はトーハンという日本の本の卸問屋の取締役から、この明屋書店の社長になって、業務の改革をされた人です。

そして、引退後は、中小企業診断士としてコンサルティング業務をされているようですね。

で、結論的には、面白くタメになる本でした。主人公の熱意が周りの人間に浸透していく様子がうまく表現されています。

私にとってこの本は、この本の章にもなっているセレンディピティ(偶然の幸運、予想外の発見)です。

 

話は、銀行出身の主人公が、簿記会計・財務諸表をまったく知らないという死んだ前社長の奥さんだった現社長に少しずつ教育していく場面があったり、始めは煙たがられていましたが徐々に会社をよくするためにどうすればいいのかを一緒に考えて進んでいくようになる店長たちとの話になります。

そして、みんなで店舗の改革に乗り出していきます。

 

この本でも書かれていたのが、大前提として、この会社をどうしていきたいのかという理念をどうするかになっています。この会社は本屋さんなのですが「私たちがお客様に売っているモノ、それはお客様の豊かな明日」としていました。

ただ金儲けがしたいとか、シェアが欲しいとか、そういうことではないのです。

 

その他では、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフローなどの基本を社長に教える体で、私たちにも教えてくれる場面もあります。

ファイナンス(お金関係)

マーケティング(売り方、売り先関係)

マネジメント(従業員関係)

三位一体であることをうまく描写している小説だと思います。

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