日商簿記と合わせて取得したい建設業経理士
私の身内が、建設業界隈の人間で、この建設業計理士2級の9月の試験を受けたこと。
それにあわせまして、
将来的に、私が開業するかもしれない行政書士の業務を調べていると、行政書士業務の柱として建設業の許認可申請代行というのがあります。
さらにそれに絡めて建設業の会計記帳や経営事項審査(略して経審、下で解説)の代行の仕事をされている行政書士事務所もあるみたいです。
今回、建設業界の身内の話と、私が行政書士になる前の基礎知識も兼ねて、建設業経理士に興味が出てきましたので、調べてみました。
そして、今のところは、建設業界にいなくても、将来的に事務職として、就職・転職を考える人、または、ご自分の付加価値を高めておきたい人も、この資格を目指されるのはとても有用で良いという結論になりました!
とくに、日商簿記を持っている人には、資格勉強の相性がすごく良くて、スキルアップとパワーアップできるかと思います。
では、建設業計理士とは、どんな資格なのか見ていきましょう。
あと、ちなみに、経審とは、
経営事項審査(けいえいじこうしんさ) 日本の建設業において、公共工事の入札に参加する建設業者の企業規模・経営状況などの客観事項を数値化した、建設業法に規定する審査。略して経審(けいしん)とも呼ばれる。引用:Wikipediaより
とのことです。この経審は、建設業企業の通信簿みたいなものですね。経営の資金力、社会貢献度、過去の実績などで、ランク分けされるようです。そのランク分けによって、入札できる公共工事が決まってくるので、公共事業をしている建設各社は、少しでもポイントがあがるようにしたいわけです。
☆その会社に何人、建設に関する有資格者がいるかということも、点数になるようです。そして、この建設業計理士も、経審のポイントになるのです。
建設業経理士資格とは?
そもそも建設業経理士とは何ぞや?というところを書いていこうと思います。
建設業経理士の実施団体は?
実施団体は、 一般財団法人 建設業振興基金というところでした。
どういう団体なのかといえば、建築施工管理士や、電気工事施工管理士という国家資格を実施している団体とのことでしたので、決して資格商法的なことをするあやしい団体ではなかったです。
ご安心してください。
この建設業経理士は、上の建築施工管理士などの国家資格とは違って、建設業振興基金の民間資格になります。
ただし、建設業経理事務士については、その社会的重要性から建設業法施行規則第 19 条に「建設業の経理知識審査等事業」として位置づけられ・・・
国土交通省の登録経理試験の実施機関として認証され・・・
建設業経理士検定試験は、登録経理試験の実施機関として国土交通大臣の登録を受け、本財団が実施する検定試験です。
建設業者が健全な発展を図るうえで、適正な経理と計数を行うことは必要不可欠である一方、建設業は受注産業であり会計処理に特殊な点が多いことから、財務・経理の担当者は高い専門性が求められます。
その建設業経理に関する知識の向上を図ることを目的としています。中でも1級、2級合格者は、公共工事の入札可否の判断の資料となる経営事項審査の評価対象の1つになっています。
引用:建設業振興基金HPより
とのことです。
民間資格ですが、国のお墨付きのある資格でありますし、建設業には重要な評価対象の一つになっている資格であることもわかります。
そのぶん、建設業は、会計が他の業種の会計とは違うところがあるので、会計の専門性が必要ということですね。
建設業経理士資格のメリットは?
企業側からみた建設業経理士を雇うメリット
国や自治体が公共工事を建設会社に発注するときは、請け負いたいと言ってきた建設会社の信用度を点数化して事前にチェックするのが、上にも書いた経審です。
実績のない企業や会計がデタラメな企業、それらをごまかしたことのある企業などに、大事な公金を使うことはできないのです。
つまり、公共工事に参加させる=入札させる会社の格付け・ランク付けをして、それを満たさない会社には、入札参加させないことにしています。
そういうふうにして、格付けに満たない会社を除外して、満たしている会社に工事をさせて、安全な道路や橋などを作ることの担保にしているわけですね。
税金ですしインフラ整備に失敗は許されないということでしょうね。
まぁ、戦後すぐなどは、例えば任侠映画などでもわかることですが、
港湾・建設・不動産というのは、大きなお金が動きますし、業者を規制する法整備ができていなかったし、当然法的なチェック機能がなかったなどで、今でいうところの「反社」組織が、ずいぶん幅を利かせて、やっていたのだろうと思われます。
そして、その良くない過去の反省を踏まえて、お国や地方公共団体は、この格付け方式を採用したのでしょうね。
さて、本題の会社が建設業経理士を持っている人を雇うメリットですが、
(残念ながら3級4級は点数になりません)
建設会社にとっては、誰かがこの資格を持っていて欲しい、そういう重要な資格になるわけですね。
この経審は、一般企業でいうところの売上高や経営状況などで、いろんな指標にそれぞれ「係数」がかけられて点数化されているので、この建設業経理士が存在することだけが経審の判断材料ではなく、他にも総合的にいろいろ計算されて、格付けが行われています。
でも、この建設業計理士資格を持つ人が経理を担当しているということは、他のテクニカルな判断材料よりも、比較的簡単で、明確に点数化ができるのです。
調べたところによると、建設業経理士1級は素点的なものが1点、2級は0.4点らしいです。
建設業経理士1級はかなり内容が難しくなるようですが、税理士を雇うのと同じ効果の1点が加点されるのは、かなりお得な資格であると思います。
1級だけでなくても、2級を持つ人が経理担当にいれば、上限はあるものの人数分が加算されます。
なにより、複数の経理担当者がこの資格を保有することは、建設会社にとっては、企業の健全性・安定性がかなり高まるのではないでしょうか。
従業員側からみた建設業経理士のメリットは?
上記のように、会社にメリットをもたらすことがその存在価値の大きな部分ですので、その見返りとして、いくつか挙げられます。
会社にメリットをもたらす人は、よほど変な人材でなければ、使い捨てにされないということにもつながります。
簿記の話のときにも同様のことを書きましたが、この建設業経理士は建設業限定ですが、後述します難易度や勉強時間、テキスト代などを考えても、かなりコストパフォーマンスのよい資格だと思います。
会社によっては、資格手当として毎月数千円が支給されるところもあるようですので、その資格取得にかかった費用も、半年ぐらいで元が取れることも、個人としては嬉しいことですね。
(すでに建設関係の雇用者ならば、受験料も会社が負担してくれるかもしれませんね)
そして、こういった性格の資格でありますので、就職・転職に有利に働くことも考えられます。
会社内においても、建設業経理の専門家として、一定の地位を確保できることにもなります。
他の難関国家資格に比べたら、少ない労力でその立場になれる可能性がありますね!
現在の建設業に、悪いイメージを持っていないのであれば、すごくいい資格だと思いますよ。(建設業は、危険な仕事で休みがなく、従業員の素行が悪いというイメージは、だいぶ薄まってきたかと思います。それに建設業計理士資格は、いわゆる内勤です)
建設業経理士の受験要綱
受験地は、全国47地区、つまり、ほとんどの都道府県で受けられるようです。都会や中核地方都市に住んでいない人間にとっては、やさしいですね。私の住む田舎の県でも試験は開催されるのは、交通費を考えたらとても喜ばしいことです。
ちなみに、この建設業経理士資格は、1級だけはかなり難易度が高く、3科目を合格してはじめて、1級ホルダーになれるようです。
ですが「プチ税理士試験」的に、一科目づつ受験して、合格した科目は5年間有効のようです。
ですので、仕事しながら1級を目指す人には、やさしい配慮がなされていますね。
試験日は、上期、下期の年二回開催されます。
3級、4級は下期だけの開催のようです。
そして、家で電卓をたたく勉強ができそうにない環境にある人には、3級4級に限っての話ですが、1週間を使っての「特別講習」で資格が取れるようです。簿記や数字に触れていなかった人にも、基礎の習得としていいことかもしれませんね。(別料金みたいですが)
試験自体の受験料等(消費税込)ですが、2020年度では、
1級(1科目) 8,120円
1級(2科目同時) 11,420円
1級(3科目同時) 14,720円
2級 7,120円
3級 5,820円
4級 4,720円
2級・3級(同日受験) 12,620円
3級・4級(同日受験) 10,220円
受験者数が簿記検定ほどの人数がいないので、受験料はちょっと高めですね。
1級だと、科目を刻んで受けるとかなり受験料が高くなりますが、一気に3つ受けると、共倒れになる可能性もあるので、、、悩ましいですね。
建設業経理士2級の試験内容
建設業経理士試験の構成も内容も、当然、簿記であることには変わりがないので、簿記検定に準じています。
大問が5つ、出題される感じも簿記検定と同じですね。
簿記2級になれば、工業簿記というのが約半分を占めることになりますが、その工業簿記は部品を仕入れて製品を作るというのが、基本の考えになります。
建設業の会計も、部品を仕入れて建築物を作るということでは、工業簿記に似ているようですので、簿記2級を持っている人にはすんなり受け入れられる勉強内容だと思われます。
結局のところ、簿記特有の論点を覚えてしまってから、とにかく、電卓を叩いて演習するのが合格への近道なのでしょう。
建設業経理士2級の難易度
2級だと、難易度は想像しているよりかは高くないようです。
簿記3級や、建設業経理事務士3級を受けた人などの、簿記を一度でも学習したことのある人ならば、独学でも合格を狙えるみたいですよ。
ですので、日商簿記3級か2級の勉強をしてから、建設業経理士の2級や1級を受けるのが一般的であるように思います。
いきなり、建設業経理士2級を受けることも、年に2回も試験があるので、一生懸命、継続的に電卓を叩いて練習すれば、独学で十分受かると思います!
建設業経理士2級試験の出題傾向と、その対策方法
つまり、試験問題は、多くの定番問題で構成されているようです。
ということは、その試験の対策としては、過去問を何回か繰り返していれば、まず合格基準ラインを確保でそうですね。
そして、受けた人の情報によると、過去問をやっていると何年かの周期でもって同じ問題が、繰り返し出されていることがわかるみたいですね。
攻略しやすそうです。
建設業経理士2級の合格率、必要な正解率
建設業経理士2級の合格率は、例年「30%~40%」で推移しています。
ちなみに、去年のデータでいくと、
- 令和元年9月 41.4%
- 平成31年3月 30.8%
-
2級 実施状況(追記しました。一般財団法人建設業振興基金HPより引用)
受験者数 合格者数 合格率 第28回(令和3年 3月14日実施) 8,766人 3,600人 41.1% 第29回(令和3年 9月12日実施) 9,318人 3,678人 39.5% 第30回(令和4年 3月13日実施) 9,288人 4,163人 44.8% 第31回(令和4年 9月11日実施) 8,847人 2,993人 33.8% 第32回(令和5年 3月12日実施) 9,636人 3,411人 35.4%
のようです。(ちなみに3級は60%台の高い合格率みたいですね)
正解率は、70%となっているようです。
70点が合格ラインはやや厳しいのかなと思いますが、
そのテスト全体での平均点があまりに悪かった場合は、補正が入って正解率が下がってくれるようですよ!
建設業経理士2級の勉強時間
調べたところによると、いきなり建設業経理士2級を受ける人はマレなのでしょうか、2級そのもの単体での勉強時間は、書いてありませんでした。
ほとんどの人は、日商簿記3級または2級、もしくは、建設業経理士3級をもっている人を対象とした勉強時間でした。
で、だいたい、一日2時間くらいを、1~2か月で、合格基準ラインに乗りそうです。
120時間くらいですね。
で、確実に一回で合格したいのなら、巷の情報の1.5倍くらいするのがいいと思いますので、一日3時間、もしくは、一日2時間を3か月とすれば(180時間)、一発合格の可能性は高まりそうです。
簿記2級を持っている人は、こんなに要らないかもしれません。
私自身が、人より勉強時間がかかる人間と自認していますので、ちょっと多めに考えています。
建設業経理士を受験できる人は?
建設業経理士2級は、誰でも受験可能です。
たとえ、1級でもOKみたいです。当然、3級、4級も。
他の資格のように、実務経験や、3級からしか受けられないという縛りはないので、受験資格の困難性はないのは、うれしいですね。
建設業経理士2級のテキスト・問題集
建設業経理士は、2級から経審のポイントになることもあり、2級1級のテキスト・問題集がメインになってくると思います。
大判のテキストで見やすそうなTACのテキストです
TAC出版の「スッキリとける問題集 建設業経理士2級」
ネットスクール出版の「建設業経理士2級 出題パターンと解き方 過去問題集&テキスト」
テキストや問題集は、ご自分のライフスタイルや好みがかなり反映されますので、ご自分にあったものを選んで、勉強のパートナーにしてくださいね!
建設業振興基金のHPにも、過去問は載せてありました。
しかし、問題は掲載されているのですが、なんと解答がないというものですので、テキストと問題集は、ご自分と相性の良い市販のものを購入することになりますね。
もし、お仕事やご自身の性格などで定期的に時間が取れない、継続的に勉強する自信がないなど、なにかしらのガイドになる人が必要と考えるのでしたら、資格学校の通信講座もアリだと思います。
他の難関資格と比べると費用は高くないですし、合格してこの資格を使った仕事に就けば、早いうちにかかった費用の元がとれそうな気がします。
中でも、資格の大原の建設業経理士講座のラインナップは、受験者の簿記のレベルに応じて、様々な講座を用意しています。
すでに、日商簿記2級レベルの人向けの講座、簿記というものに初めて触れる人向けの講座、
建設業経理士1級の科目をじっくり勉強したい人向けの講座など。
建設業経理士資格 まとめ
・難易度は簿記3級と2級のあいだくらい
・既に簿記検定を持っているなら独学でも合格できる
・テキストもそんなにお金がかからない
・建設業界では重宝される
・リストラされにくい
・資格手当がもらえるかも
・建設業界への就職・転職に有利に働く
事務職志望で安定的に働きたいのでしたら、日商簿記とダブルライセンスでこの建設業経理士を取得すると、持っていない人と比べると、かなりのアドバンテージになりますね!
なにより個人にも、会社にもメリットがある有能な資格ということがわかりました。
最後に、
簿記試験と同じく、記憶することもあると思いますが、やっぱり演習をこなすことが必要になってくると思います。演習とは、実際に電卓を叩いて「慣れる」ということになります。
ご自分の指先にあわない電卓、あまりにボタンや表示が小さい電卓では作業効率が悪いですし、ミスタッチにつながります。
日ごろから、そこそこ良い電卓を使って、演習になれておくことがこの資格の攻略の一つになってくると思います。
ちなみに下の電卓は、私が簿記3級のときに買ったキャノンの電卓です。
今までの8桁のw小さいモノなんかよりはるかに使いやすいですし、2,000円しないくらいの値段でした。
それでは皆さん、合格に向けて頑張ってくださいね!